A:急性発症して治癒する例:

 

1、橈骨末端骨折:お年寄りの代表的骨折の一つです

 

急性期:

 

問診・及び検査:

 

60歳代の女性ですが、転倒し、右手をついて、手首が腫れて、痛くて物も、つかめない状態で来院。レントゲンで手首の骨折(橈骨遠位端骨折)と診断

 

治療方針:ひどい骨折ではないので、当院で対応できると判断

 

ギブス固定、鎮痛剤など7日分処方、手の腫れに対して注意

 

回復前期:7日後:いたみ、腫れの減少。ギブス下に手の動き、手関節の等尺運動など

           理学療法開始。鎮痛薬など必要なし

 

回復後期:5週後:ギブスを外し、関節可動域訓練、握力増強訓練、この間に骨粗鬆症検 

          査、骨粗鬆症ありと診断

 

治癒・維持期:7週後:手の痛みなく、握力も回復、骨折は治癒と診断

 

以後骨粗鬆症の治療継続

 

     

 

橈骨末端骨折で他に考えられること

 

*急性期変形が著明な場合、手術の方が良いと診断し、転院。

 

術後回復後期ハビリのため、再び当院通院

 

     *手術しないで、ギブス固定で治療したが、変形が残り、ギブス除去後の

 

回復後期リハビリが長期化する場合もあり

 

     *骨粗鬆症による骨折は、手首(橈骨遠位端・尺骨茎状突起)、背骨(腰椎・胸椎)、股関節(大腿骨近位部)肩(上腕骨頸部)などが代表的ですが、その他にも、肋骨、骨盤等にも起こり易いです。一度骨折すると次々に骨折が起きること(骨折連鎖)知られています。したがって骨折治癒後も、骨粗鬆症治療は必要で、月1回、または数か月1回の診察が望ましいです。

 

  ※外傷の雑談:怪我の場合、多くは、治癒しますが、重度の外傷は後遺症を残す可能性もあり、治療が長引く場合もあります。

 

 

2、ぎっくり腰(何かの拍子に急に腰が動かせないほどの腰が痛くなる)

 

 急性期

 

    問診・検査

 

      比較的若い人で、わずかな動作で、最初はアレと思う程度の腰痛でも、急激にとても痛くなり、腰が伸ばせなかったり、ノリカガミ、歩行までも困難な腰痛に発展します。また、寝起きがつらいなどといいます。腰痛は、左右どちらかであったり、中心部であったり、腰全体に広がっています。検査では、押さえても痛いところが解らない(圧痛がない)ことが多いのですが、動作は強く制限されています。

 

    治療方針

 

      わずかな動作で起こった腰痛ですから、腰椎の損傷は軽いものだと思われます。そのわりに痛みが強いので、動作制限が強く現れています。したがって、痛みをとれば、動きやすくなります。このため、痛みが強いぎっくり腰にはブロックが第一選択です。ほとんどの人は、1回のブロックで回復前期、または後期もとおりこして、治癒になります。また、1週間程度は、薬は処方通りに飲む方が良いでしよう。そして完璧に腰痛を忘れることです。少々痛くても、通常の生活は続けた方が良いです。ぎっくり腰では、これが最も多いパターンですが、少数ながら、回復前期・後期の経過をたどる人もいます。

 

  回復前期:いたみは半分以下になっていますが、何かもう一つ痛みが残っている、腰の動きが不安である場合もあります。たいていは、腰の動きが不自然です。この場合、薬は頓服にしてもかまいませんが、ドローイングやストレッチ中止のリハビリを開始します。そして、何かぎっくり腰の原因になるものがないかどうか診断もします。たいてい、腰のずれ・彎曲以上、椎間板の変性、筋萎縮、身体の硬さなどがあります。職業など生活環境に原因がある場合もあります。それらに対処するのは、回復後期です。

 

  回復後期:いたみは無くなっても、再発の危険因子は、潜んでいます。腰のずれ・彎曲以上、椎間板の変性などはしかたがないもので、治そうにも治りません。しかし、筋萎縮、身体の硬さなどはリハビリ訓練で克服できます。再発が嫌なら、リハビリをし、自己管理できるようになりましよう。当院は、この状態にも応援できるよう、リハビリを充実させています。一緒に頑張ってみませんか。

 

  治癒期・維持期

 

      痛みがなくなれば、治ったと思うのが、一般的です。したがって、1回のブロック注射で、回復前期後期を飛ばして、治癒になる場合がほとんどです。しかし、回復後期に書いたような、再発危険因子が潜んでいる場合には、再発しないように、時々クリニックに顔を見せてください。体力測定したり、その時にあった訓練を指導します。一般的には、痛みが治れば、治癒と思う人が大半で、それはそれでも良いと思っています。腰痛のみを気にして生きてはいけません。

 

  ぎっくり腰についての注意・雑談

 

      *お年寄りなら、圧迫骨折の可能性も排除できません。圧迫骨折なら、治療方針は全く異なります。注意が必要です。医師の指示にしたがってください。

 

      *熱があれば、化膿性脊椎炎も否定できません。化膿性脊椎炎なら、治療方針は全く異なります。注意が必要です。医師の指示にしたがってください。

 

      *もし、リウマチ、癌、ステロイド使用中などであれば、ぎっくり腰でない場合もあります。注意が必要です。医師の指示にしたがってください。

 

      *もちろん軽いぎっくり腰の場合は、入浴で温まり、腰を軽く動かし、薬・湿布のみで十分なことも多くあります。

 

 

 

3、腰椎椎間板ヘルニア(腰痛と足の痛みが特徴的)

 

急性期:

 

問診・及び検査

 

いたみの起こり方は様々で、転倒・打撲・ぎっくり腰などで急激に起こる場合もあるし、仕事しながら徐々に起きる場合もあります。しかし症状はある程度一定したパターンがあり、腰痛とともに足に電気が走るような痛みがあります。診察ではしたがって、腰のみならず足の状態も観察します。

 

治療方針

 

痛みは激烈であり、歩けなかったり、腰を伸ばせない場合もあります。しかし、

 

ほとんどのヘルニアは消失します。まずは痛みを軽減するため、症状がひどければ、ブロック注射をし、痛み止めの薬を処方します。仕事を休まなければならない場合もあります。しかし、仕事は、注射や薬で痛みを抑えて、なるべく続けていただきたいと思います。時にコルセットが役に立つこともあります。1週間か、23週間で軽くなる傾向が見えてくる人が多く、回復前期に移行します。生活指導としては、同一姿勢を長く続けない。休職が必要な場合、思い切って3週間ぐらい休みをもらった方が良いこともあります。寝る時は、横向きでも、仰向けでも少し膝を曲げたほうが良いでしよう。

 

回復前期:痛みはあるが、仕事は可能であれば、急性期と回復前期の区別は厳密に考えないで、薬・注射をしながら、または短時間作業にする、重量物運搬など腰に負担のかかる作業を変更するなどしても仕事は続けてください。場合により、コルセットも役に立ちます。リハビリは、軽い腹筋訓練・壁スクワットなどから始めす。日常生活では、中腰姿勢をできるだけ避け、同じ姿勢を長く続けない、長時間運転、重量物の運搬などは避けたいです。

 

回復後期:いたみは、しびれに変わり、または夕方とかの疲れがたまった頃に出る程度になります。注射はほとんど必要なく、薬もできるだけ減らす方向で考えていきます。リハビリでは、腹筋訓練・スクワットなど積極的運動に進めます。身体が硬い・筋力が弱いなどは再発の危険因子なので、ストレッチ、筋力・持久力などの運動を、理学療法士の指導でおこないます。生活では、できるだけ腰に負担のかからない姿勢を学びましよう。

 

治癒期・維持期

 

  痛みもしびれもなくなります。あるいは、足の指の筋力が少し弱いかも知れません薬・注射は不要です。または、痛くなりそうだと思うとき頓服として飲む程度で良いです。しかし、身体が硬い、筋力が弱いことは危険因子です。克服するための訓練を自分で続けながら、2週間~3ヵ月に一度くらい、定期的に体力測定などチェックのため、診察やリハビリも良いことです。

 

 

 

腰椎椎間板ヘルニアについて雑談

 

   *ヘルニアはいくら痛くても、時間が少々かかりますが、手術しないで治るのが普通だと信じてよい病気です。手術の必要な場合は限られています。

 

   *薬やブロックに頼らないで、リハビリで治したいと考える人もいますが、急性期には、薬も注射も上手に使って、医師の処方通りの分量・回数で飲み、またはブロックもしたほうが賢いです。副作用が心配ですが、それは出た時に薬を中止すればよいです(慢性化すると、厄介なことになります)。

 

   *ブロックは、多くのお医者さんは神経根ブロックをされているようです。しかし、これは傷んだ神経に直接針を当てるので相当痛いです。知り合いの医師にこのブロックをしたことがありますが、そのDrからあまりに痛いから次はごめんだと言われて以来、私は神経に直接針を当てない硬膜外ブロックをします。このDrに言われるまで痛いことは解っていましたが、それまで患者さんは我慢しなければならないものだと思っていました。私の独断だと知りました。なお、効果は、同じだと思っていますが、硬膜外ブロックが利かない場合もあります。この時は、まれですが、神経根ブロックをします。

 

  *若い時ヘルニアと言われ、以来、腰痛が持病になっていると言われる人もいます。この場合、たいていは、筋肉は弱っています。回復後期のリハビリができていなかったと思われます。腰は身体の基本です。鍛えるリハビリが重要です。わかっていても、痛みが軽くなれば運動の継続はおろそかになるのも人間的です。当院では、再発予防のリハビリ、体力維持のリハビリにも力を入れて応援します。一緒にがんばってみましよう。