表は、当クリニックの治療過程の中で、患者さんと、医師・療法士などの治療者が、どういう風にかかわっていくかを示した理想像です。

 

 まず病気には、発生してから、治っていく過程があると考えます。急性期、回復前期、回復後期、治癒・維持期にこれを分けました。その過程で、目標とする治療、患者さん・医師・療法士のかかわり方が違います。

 

 急性期とは、痛みなど障害が発生して早い時期で、痛みは相当強く、日常の活動が制限されています。したがって、この時期は、いかに早く痛みを軽減するかが大切で、これを目標にします。そのためには、医師の役目が大きく、患者さんは医師の指示(薬・注射・ブロックなど)に従うことが最善です。したがって患者さんは受け身で、自己診断は禁物です。療法士は、痛みの出にくい動作・運動を指導したり、物理療法(冷やしたり温める)をし、補助的です。

 

 回復前期とは、痛みが次第に軽くなり、通常の生活で少し支障が出る程度の時期と考えます。痛みが強くないなら、発生初期でも、回復前期と考えます。この時期は、再び、強い痛みに襲われないように注意して、通常の生活を続けることが目標になります。医師の処方する薬で、痛み止めは、痛い時に早めに飲む、注射は痛い時にするようになり、減ってきます。しかし、身体のコンディションを整える薬や注射(骨粗鬆の薬や注射、ヒアルロン酸注射)は定期的に必要になります。したがって、医師の患者さんに対する関与は少し軽減します。その代り、療法士の役割が増して、痛みの出ない軽めの運動指導から開始します。痛みがあれば、電気治療したりしますが、これは従となり、患者さんは、療法士の指示を守り、軽い運動を決められた通り始めることが大切です。したがって、家庭でも指導された運動を継続することが肝要です。運動の継続は痛みが軽くなれば忘れますし、病院のリハビリが、総てと思いがちですが、虫歯にならないため、歯磨きを毎日するように、腰磨きも重要です。ここは患者さんの自覚が大事になり、多少は自重した生活を強いられながらも、指示された運動を継続するという、大切な患者さんの役目に変わります。しかし、運動は両刃の剣です。療法士に指示された運動をして、かえって悪化したということも、ままありますし、全く効果が解らないこともあります。そのようなとき療法士・医師とよく話をして、訓練を中断しないで続けることが大事です。役目から言えば、療法士・医師・患者さんの順か、療法士・患者さん・医師の順になるかと思います。運動習慣のある患者さんは、自分のしている運動でよいと思い勝ちですが、同じ腹筋訓練でも幾種類もあります。最初は療法士に従った方が良いでしよう。

 

回復後期では、痛みがほとんどなくなる時期です。したがって、医師の出る幕は大いに減り、療法士と患者さんが主役か、患者さんが主役になります。たまに仕事のし過ぎで痛みが出た時に、医師の関与が必要になるくらいです。この時期は、できるだけ再発の芽を摘んでおくことが重要です。再発の芽は、例えば、腰痛なら、骨粗鬆症、変性すべり症、分離すべり症など骨の問題から、腹筋・背筋の筋力低下、身体の硬さなど、関節なら変形、軟骨の摩耗度、動き具合、筋力低下などですが、手術しないで、リハビリで出来ることは、腰や膝の筋力をつけ、あるいは柔軟性を上げる運動の継続です。運動は初期には、最低週1回は続けなくては、目的を達成できません。療法士と相談しながら、自分に合った運動習慣を身に着けることです。もちろん回復初期の運動と比較すると、運動フォーム、負荷も段階的にアップしたものになりますし、役割分担は、患者さんが第一で、療法士・医師の順になります。

 

治癒期とは、痛みがなくなり、再発の芽も無くなり、運動習慣も確立した状態で、クリニック卒業です。しかし、多くの再発の芽となる危険因子は、加齢によっても自然に出てくるものです。痛みも多かれ少なかれ時に出ます。したがって、高齢化社会の現在においては、「いかにうまく病気・痛みと付き合っていくか」が重要になります。したがって、理想的にいえば一生運動を継続し、時々医師・療法士のアドバイス、診察を受けることが理想と言えます。したがって、卒業はないので、維持期と言います。もちろん主役は患者さんで、理学療法士は1ヵ月に一度、医師は13ヵ月に一度くらいの役目であればよいと思われます。

 

理想的にいえば、以上のようになると思われますが、長い間持病としてあきらめていたけど、時に悪化してクリニックに来られる患者さんもいれば、痛みが軽くなると治ったと思い、治療を中断し、回復前期から抜け出せない患者さんも多くおられます。もちろんお仕事が大事ですし、家庭の事情などもあり、理想通りにはいかないのが、この世であると承知しています。ですから、一応当院の根本的で、理想的な治療の考え方・姿勢を頭の片隅にでも入れておいていただけるとありがたいですし、リハビリを少しでも継続されようと思う方は、かかりつけ医として、一緒に頑張らせて頂きます。

 

回復初期で卒業と判定されているクリニック・診療所・病院も多くあります。当院は回復前期から後期・維持期のリハビリにも力を注いでいるクリニックとして、他にはない特徴があると解っていただき、利用していただけるとありがたいです。